ボクたちは、もうほとんど引越した。
引越先は、同じ家の、別の部屋だ。
一応、契約上では、前の部屋が4月までで、次の部屋は5月からになってる。
でも、新しい部屋の大家さん(今の大家さんのお姉さんの旦那さん)が
旅行で5月半ばまで帰ってこないというので、
ボクたちは、もう4月中から勝手に引越していいことになった。
ほんの15mほどの引越だ。
そういえばこの家に引越してきたのも、去年の4月だった。
1年ですっかり、この家の家族と仲良しになった。
もうボクたちは、この家の古い台所や食堂まで知っていて、
いつも大家さんたちは「ごきげんよう、プーちゃん」とにっこり挨拶
ボクも「ごきげんよう、マダム、ごきげんよう、ムッシゥ」とにっこり挨拶。
まるでこれでは、毎日日曜。
新しい部屋は、とても快適で、
ボクもプー子ちゃんも、もう外に出たくない。
もうトゥールーズを出るまで、この家に住んでいたいとさえ思う。
とくにこの部屋でする昼寝は格別だ。
天上はとても高くて、4mはあるかと思う。
ボクがボクのうえにボクを肩車して、そのボクがまた別のボクを肩車しても…
ボク3、4人分じゃあぜんぜん足りない。
あの天上には、シャンデリアがぶら下がってたんだろうな。
なんでもこの通りで一番古い家で、建ったのは1850年らしい。
まんなかには大理石の暖炉がある。ベッドはお花でできている。
大理石はお花で、暖炉はベッドというわけだ。
これは部屋に入るドアの装飾。
ちゃんと古い時代の知恵がいきていて、ドアノブは真上から見ると、直角じゃない。
服とかがひっかからないようにするためだ。
あと、鍵穴を隠すカバー?も、くるりとまわって、一周しないように、工夫がされている。
まったく現代のフランス人は、こういう気配りをどこに置いてきたんだろう。
これはお風呂場のタイル。暘刻だ。
ただしこの部屋には、インターネットの接続口がない。
それが目下の問題だけど、
それぐらい、どうだっていいやというほど、この部屋は気持ちがいい。
お気に入りだ。
ところっで1850年というと、椿姫の初演より少しだけ前、
だからまるでオペラの舞台セットのなかにいるみたいだ。
ラ・ボエームとかじゃなくて、フィガロの結婚をイメージしてもらいたい。
ボクの妹はプリマドンナなので、乾杯の歌を歌っている。
けれどもボクとしては、まんなかの暖炉から火の粉がでてきて
ボクを呑み込んでしまわないか、心配だ。
品行方正にしておかないといけない。
品行方正なボク。アオちゃんと一緒に。
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