今日からフランスは冬時間になった。
夏時間から冬時間になるときは、1時間時計を遅らせることになっている。
ということは、朝は1時間分明るくなって、夜は1時間分暗くなるのが早い。
たった1時間の違いだけど、ボクは繊細でいらっしゃるので
ちょっと今日はまだ体がなれなかった。ボクは繊細でいらっしゃるので。
ボクたちはいま、トゥールーズでバカンスをお過ごしになっている。
今日のトゥールーズは、年に1回のマラソン大会の日で、
街じゅう通行止めになっていた。
ボクは、朝のマルシェに行くときに、マラソンをご覧になった。
とても早いランナー集団だったようで、みんなものすごい勢いで走っていった。
沿道の応援も気合が入っていて、ランナーが通ると、拍手が起こった。
ブラスバンド隊もいて、ランナーが立ち止まってはいけない雰囲気が出ていた。
ボクは、マラソンは大嫌いなスポーツのひとつだ。
走って、走って、ひたすら走って、息が上がって苦しくても、
こうやって沿道の人たちがプーちゃん頑張れと言う。
呑気なもんだ、自分は走っていないから、他人に走れと簡単に言えるんだ。
走っているボクの身にもなってみてくれ、
息も絶え絶え、吐き気を催して、頭が痛くなっても
みんなに応援されているからっていうんで、走らなきゃいけない。
なんて残酷なスポーツなんだ。ボクは絶対に御免だ。
ボクはメロスじゃない。セリヌンティウスなんてボクは知らない。
ボクは、家でごろごろしているプーなのだ。
お昼過ぎぐらいにまた家をでると、
町中には、走り終わったランナーたちが、カフェのテラスでビールを飲んでいた。
走ったあとはさぞおいしかろう。
ところがどっこい、まだ遅いランナーたちは走っていたわけで、
もう沿道の応援もまばらになって、ブラスバンド隊も帰ってしまった後のコースを
黙々と走っていた。本当に、よく走るなあ。
ところで、トゥールーズのおうちは、9月からずっとペンキ工事をしていた。
ようやく終わった、はず、だけども、仕上がりがとてもひどい。
これはペンキ中。
業者のおにいちゃんが
壁紙をはがして
貼り直して
それから塗っていた。
そして
その剥がされた壁紙が、これ。
うちの前に捨てられていた。
もちろん、ここはごみ捨て場じゃない。
こういうものは、たとえフランスでも
業者が持って帰るのが普通だと思う。
それから、お台所のオタマに、白いペンキが付いていた。
お台所は、毎日使うから、日常品をどけなくてもいいと言われていた。
そのかわりに業者のにいちゃんが、カバーをするはずだった。
それが不完全だったらしい。
これから冬になって、スープの季節なのに、オタマが使えないなんて!
ニンゲンたちは、業者に弁償させようとか言っているけど
ボクは、どうでもいいから新しいオタマがほしい。
プー子ちゃんに意見を求めたら、日本シリーズでそれどころじゃないらしい。
エセル卿も、プー子ちゃんにつきあって、野球を見ている。
ボクはちょっと孤独だ。
まるで、みんながゴオルしたあとに遅れて走っていて、
生暖かい拍手をもらうランナーの気分だ。