みなさま、こんにちは。再びエセル卿でございます。
早いもので、わたくしの日本滞在も無事おわり、
昨夜トゥールーズに戻ってまいりました。
この日本滞在を思い起こせば、いやはや色々なことがございました。
そのすべてをご報告するのは到底無理でございますが、
なかでもわたくしはこれだけはご報告したい、と思うことがございます。
それは、ある方との出会いです、
何をかくそう、その方にわたくしは
紳士とは何かを教えて頂いたのでございます。
恥ずかしながら、不肖エセル卿、
少なからぬ年月のあいだロードを名乗っておきながら
まったく紳士の何たるかを知らずに生きていたのでございます。
まさかそれを、日本という異郷で知ることになるとは。
まったく偶然のご縁に感謝でございます。
さて、その方とお会いしたころのわたくしは
日本というところに疲弊しておりました。
まずは、その暑さでございます。
昼に暑いのはわかりますが、なぜ夜も暑いのか、
わたくしには理解できません、理解できず
毎晩この難問に唸っておりました。
それから、人の多さでございます。
大阪駅というところは、巨大な巨大な要塞でございました。
一体どこに電車が通っているのか、よくわかりません。
けれどもこの要塞は、よく見ると、そんなに人が流れておりません。
歩くところは結局地下が多く、またその地下は人だらけでございました。
視界に入るは、浮き足立った人か、疲れきった人だけでございます
はっと気付いて、辺りを見回しても、樹木はおろか、窓さえない!
これはみなさん、明らかに、酸素不足です!
「さっ、サンソ!サンソ!」
地上へと逃げるエレベーターは、えらく奇麗でございます
わたくし、汚さずに乗るのに必死でございました。
そして極めつけは、トイレ!
わたくしは、ここで一晩明かせといわれても
余裕のよっちゃんで過ごせますでしょう
なんですかこのソファは!!これのどこがトイレなんですか!
そんなことだから浮き足立つのでございます
トゥールーズが小川のせせらぎだとするなら、
大阪は洗濯機の荒波でございます
わたくしには、刺激が強すぎる
さて、このように疲れ果てていたとき、
わたくしはあのお方に出会いました。
GENTLEMENと名乗られるあの方は、悠然と立っていらっしゃいました。
わたくしは、ここにも英国紳士の方々がいるのかと、
遠い異国で同朋を見つけたよろこびをかみしめ、
その代表であるあの方にお声をかけました。
「あの、あなたも英国紳士でいらっしゃいますか」
「…」
「あの、日本というのは、暑うございますね」
「…」
「それに、人も多うございます」
「…」
「わたくしは、疲れてしまいました」
「…」
「あの、」
「…」
あの方は、わたくしの問いかけに一切応えられませなんだ。
そこで不思議に思ったわたくしは、目の前が急に明るくなったように思いました
そうです、紳士というのは、愚痴を口にしてはいけないのです。
あの方は、それを自ら身を以て、ふがないわたくしに教えようとしてくださっているのです
なんと、ありがたい!弥勒菩薩さま!
紳士の方と記念撮影
これを機に、わたくしの日本滞在はバラ色に変わったのでございます。
それはまた次回、お話いたしましょう
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